「そんなひと、いるわけないのにね。
二十四の年増に子持ち、おまけに夢見姫。
私の力をなくしたりしたら、相手はいい笑いものになるわ。
飼い殺しにした方が、利用価値があったのに、って……」
じわ、と涙がにじんできた。
もうやめたいのに、口は勝手に動き続ける。
「本当は、自信なんかこれっぽっちもないの。
私の誇りは、子供達だけ。
こんな力、いらない。
なんの役にも立たない……」
「そんなことありません。
姫様、ご存知ですか。
あなた様に助言をもらった翁は、何度も礼を言って、帰ったそうです。
涙を流して、あなたに感謝して……」
「感謝なんかしてくれなくていい!
そのために夢を見てるわけじゃないわ!」
突然大声を出した私の様子に驚いたのか、博嗣は一瞬言葉を失った。
そのすきを、涙がひとつ、通り過ぎた。
「ねえ、教えて、博嗣」
「はい、姫様」
「あたしは、占いで人々を幸福にするのが、務めだと思っていたの」
「間違っていないと思います」
「でも……じゃあ、私の事は誰が幸せにしてくれるの……?」



