博嗣は深くは追求せず、ホッと息を吐く。



「あ、ああ、良かった……」



そう言って。


優しい顔で笑った。



「なんで、あなたが『良かった』のよ」


「え?ええと、それは、その……

ご恩のあるお方が、敵方の領主の奥方になるのは、やはり複雑でして……」


「ああ、そう……」



心配してくれたのね。


あなたは優しいから。


いつもほっこりと温まる胸は、今日に限って、何故か苦しい。


「本当はね……」



口が勝手に、言葉をつむいだ。