「あの落武者……」


思い出した。


私は落武者を拾ったんだった。



「ああ、あの落武者なら、まだ眠って……姫様?」


「行ってくる。誰も近づかないで」



私はずんずんと、廊下を歩いていく。


あの落武者……ふふふ。


八つ当たりしてやるっ!!


立場上、家の者に当たるわけにはいかないけれど。


あいつなら、いいはず。


当たってやるわよっ!待ってなさい、落武者!


私はにそにそと笑いながら、落武者の元へと急いだ。