「夢、あのね、そういうこと言ってると押し倒しちゃうよ?」

「いいよ?押し倒しても。」

「は…?」

「ショウの好きなようにしていいんだよ?」


俺を覗きこむ目が相変わらずトロンとしている。
今の夢はいつもの夢じゃないことは分かっている。分かっているけれど。
―――理性がもう、ぶち壊されてしまいそうだ。


「…夢、ダメだって、そういうこと言っちゃ。」

「どうしてぇ?ショウはあたしのこと、好きじゃないの?」

「…好きだよ。好きだから…大事にしたいんだよ。酔った勢いでとかそういうのは望んでない。」

「ショウはあたしを…望まない…。」

「違うよ。夢を望んでる。…でも、今じゃない。」

「…意味、分かんない…。」

「ひとまず待って。俺が落ち着かない。ここで座ってて。」

「…すぐ、戻ってくる?」

「戻ってくるよ。」


ちゅっとわざと音を立てて額にキスを落とす。
するとにっこりと笑って(まず夢はこんな風には基本的に笑わない)ゆっくりとソファーに座る。


…よくぞ抑えた自分と心の中で自分を褒め称えて(夢を押し倒さなかったことと、夢を上手くなだめられたこと)冷蔵庫から水を出す。
大きめのグラスになみなみと注いで、それを夢の元に持っていく。


「ショウ…!」

「いいよ、立たなくて。さぁ、これ飲んで。」

「飲んだら、ちゅーしてくれる?」

「いいよ、ちゅーでもなんでもしてあげるからゆっくり飲んで。」

「はぁい。」


俺からグラスを受け取ると、ごくごくと水を飲む夢。
あっという間にグラスが空になった。