* * *


「あっ…!」


そう言ったときには時すでに遅し、だった。
ゴクゴクと飲み干されたのは夢用に買ったノンアルコールシャンパンではなく、俺用のシャンパンで。つまり、アルコールはバッチリ入っている。


みるみると頬が赤く染まっていく。それも照れた時とは比じゃないくらいに。目がトロンとして焦点が定まっていない。


「ゆ…め…?だ、大丈夫?」

「何がぁ?」


…だ、だめだこれは。完全に…。


「酔ってる…。」

「ショウ…ぎゅーって…して…?」

「は…い…?」


食卓を離れて、俺の元へと覚束ない足取りでやってくる。そして俺に抱きつく。
…夢らしくない行動だ。


「ねぇショウ?ぎゅーってしてくれないの?」

「いや…す、るけど…さ…。」


まるで子どものように甘えてくる夢に若干の戸惑いを覚えながらも、抱きしめられて悪い気はもちろんしないし、可愛いと思うからこそ抱きしめる。
すると夢はさらに背中に回した腕に力を込めてくる。


「夢…?」

「ショウ、だーいすき。」

「っ…あ、ありがと…。」


…まさか夢のこんなにも甘えた声で大好きなんて言葉を言ってもらえるなんて思ってもみなかった。
もうすでに最高のプレゼントを貰ったとも言える。


「夢、ちょっと離れてここで待ってて。」

「…嫌。」

「えぇ?」

「ショウと離れるの、嫌。」


…これは…どうしてくれようか。
どうしようもなく可愛い。…それこそ、押し倒してしまいたくなるくらいには。