「…なぁに?」

「俺のおねだり、すぐ叶えられるものなので叶えてもらってもいいですか?」

「…一応聞く。」

「添い寝、させてほしいです。」

「…は…?」

「だから添い寝です。これならすぐ叶えてもらえます。夏海さんは寝て下さい。俺も隣で寝ますから。それでお互いの望みが叶います。」

「…私、眠いけど頭はそこそこ正常に働いてるんだけど?」

「どっちのおねだりも叶えられるでしょう?」

「……分かった。」

「じゃあ、寝ましょっか。」


そう言って俺は夏海さんの左手をぎゅっと握る。手が温かい、ということは本格的に眠いんだな、夏海さん。


「じゃ、夏海さんからどうぞ。」

「なにが?」

「ベッドに入るのは夏海さんが先です。だって眠りたいっておねだりを先に叶えるのがきまりですから。」

「…変なとこ律儀。」


そう言った夏海さんはやっぱり本気で眠いらしい。俺のベッドに入って、くるりと向きを変えて壁側に顔を向ける。


今度は俺の番だ。…俺の方に背中を向けられたのはちょっと悲しいけど、でもこうやって寝るのは夏海さんのクセなのだから仕方がない。
後ろからぎゅっと抱きしめ、夏海さんの首筋に鼻をあてた。


「…近い。」

「だって添い寝ですもん。」

「あ、そ。…じゃあ、おやすみ。」


近いとは言ったけど、嫌とは言わないでくれるところが今日は妙に嬉しい。


「おやすみなさい、夏海さん。」


俺は首筋にそっとキスを落とす。


「ちょっと!」


そう言ってぐるっと顔だけこっちを向けた夏海さんの唇を塞ぐ。もちろん、軽く。


「あのねぇ!私寝たいって…!」

「夏海さんが足りないので、…つい。もうほんとに何もしませんって。
何もしないから、俺の方に顔向けて寝てくれませんか?」

「…何もしないでよ。安眠妨害したら明日おねだり聞かないからね。」

「はい。」

「…じゃあ…。」


そう言って夏海さんが俺の胸に飛び込んでくる。その身体をゆっくり抱きしめる。


「…おやすみ。」

「おやすみなさい。」


時計を見ると12時を少し越えていた。
…絶望のクリスマスイブから一変、最高のクリスマスの始まりだ。


*fin*