「な、なに笑ってんのよ!」

「だって夏海さんがあんまり必死で。キス、だめでした?」

「べ、別にだめとは言ってない…けど。」

「けど…何です?」

「甘えるって…難しい。」

「あ、じゃあおねだりはどうですか?お互いに1個ずつおねだりしてそれを叶えるってのは!甘えるに近いと思いません?」

「…おねだり…。何かを風馬にねだればいいの?」

「まずは些細なことからじゃないと、ほら、甘え下手同士としては。
夏海さん、俺に何してほしいですか?」

「…え、そ、そんないきなり言われても…。」

「出てきません?俺、結構出てくるんですけど。」

「なに?」

「夏海さんから抱きしめてほしい…はさっき叶ったし、頭も撫でてもらったし…あ、じゃあキスしてほしいです!」

「は!?さっきしたじゃない!」

「それは俺からだったんで。おねだりですし、夏海さんから…。」

「あ、あった!私もおねだり!」

「じゃあ、先に夏海さんから。俺、結構夏海さんに叶えてもらっちゃってるんで。」

「…何でもいいんでしょ?」

「はい。」

「じゃあ……寝かせてください。」

「…え?」


…なんだ、今のは。多分聞き間違いだ。


「だから、寝かせてください。ほんとに眠気が結構限界…。視界が少しふわふわしてきた。風馬、温かいんだもん。」

「え、ちょっ、ま、待ってください夏海さん!泊まっていくのは構いませんけどえ、な、今寝るんですか?え?」

「風馬のベッド貸して…。あ、これもおねだりか…じゃあここで…。」

「いやいやいや!ここで寝るとか無理です!いいです俺のベッド使って下さい。」

「あ、そう。じゃあ私のおねだり1個、叶えてくれてありがとう。
…風馬のおねだりは…明日、叶える。」


そう言って俺の部屋へと歩みを進める夏海さん。
…俺は半ば置き去り状態だ。


「ちょっ、待って下さい夏海さん!」


俺は階段を上る夏海さんの腕を引いた。