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彼女がいる(しかもとびっきり美人で優しくて頭の良い)のに、そして世間はこんなにもクリスマスムード一色だと言うのに。


…どうして俺のテンションがこんなにも低いのか。
そんなの答えは明白だ。


話は12月1日にさかのぼる。



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「なーつみさん!クリスマス、どこ行きましょうか!」

「え、クリスマス?そんなの、今年の私にあるわけないじゃない。」

「は…い…?な、なんですか今の。幻聴ですか?」

「幻聴じゃなくて、真面目な話。本当にクリスマスなんてないのよ、今年は。」

「いや、ありますけど。」

「あ、だから、世間的にも暦の上でもあるのかもしれないけど、私達4年生にはないのよ、今年のクリスマスは。」

「…あの、どういうことですか?」


ふぅ、と一息置いてから、夏海さんは少し悲しそうな、というか疲れたような目をしながら口を開いた。


「卒論。卒業論文。締め切りが12月26日。ね?遊んでる暇なんてないのよ。」


それは俺にとって絶望通知だった。