声に緊張が混じる。灯りを点けて顔がよく見えるようになると、その強張った表情が余計に分かる。本当にどうしたんだろう。


「んーと、カフェモカでいい?」

「…はい。」

「適当なところに座っててね。」

「…ありがとうございます。」


…どうしよう。本当に何も原因が分からない。愛想をつかされたとしても、納得できない自信がある。分からない。…分からない、本当に。
やかんに水を入れて火にかける。自分の分と彼女の分のマグカップを用意して、インスタントのコーヒー粉末を流し込む。あとはお湯を注げば終了だ。


「お待たせ。最近本当に冷えるよね。」

「…そう、ですね。」

「はい、どうぞ。」

「…ありがとうございます。」


そう言って、そっとマグカップを手にとって口をつける彼女。いつもならばその温かさに小さく頬を緩めるのに、今日は硬いままだ。


俺は彼女の向かいに座り、自分のマグカップに手を伸ばした。いつもと同じメーカーの、そして同じ分量のお湯を入れたはずなのに味がしないのは心がここにないからだろう。


「ねぇ、凜。」

「…はい。」

「今、俺が凜の隣に座ったら、…凜は困る?」

「…困りません。」

「そう。」


確認は取った。…別に嫌われているとかそういうことじゃないらしい。
俺はゆっくりと彼女の隣に腰を下ろす。それから、テーブルの上のマグカップを自分の方に寄せた。


「…さっきも言ったけど、大丈夫そうに見えない。何かあった?受験のこと?」

「受験勉強は順調、です。」

「だよね。じゃあ他…友達のことの悩み?」

「友人関係も…良好、です。」

「そっか。…じゃあ、俺の…こと?」


若干、声が震えた。