ゆっくり… 月へと弱々しく手を伸ばす。 その誰もが認める美しさに憧れて、 自由なその在り方に嫉妬して… 大きな空で月を見てみたい さえぎるものがない、 狭い空でなく広い空を―… 「なにしてんだ」 月を眺めているとそう言って、 後方から定吉様がこちらに歩いてきた。 定吉様はこの松江屋に働く男衆。 まだ若くて、松江屋の亭主の息子。 私より、7つ程上だったはずだ 今後、ここを継いでいく運命…