玲Side
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櫂達と別れ、睦月と翠と共に塔の頂上を目指していた僕。
間近で見る翠の能力は、以前に比べて飛躍的に開花している。
空高く浮遊できることも、それを維持出来ることも、同時に桜に似た吉祥という式神を使役できるのも。
一介の陰陽師というより新人類じみているが、それでも短期間での進化度は、驚嘆すべき事柄。
ただ、大きな力を一度に使い続けることによって、オーバーヒートのような反動が、いつ翠をおそうかわからない…その不安があった。
小康的になんとか落ち着いた、今の状況がこのまま続くならいい。
だが、この世界は不穏に揺れている。
ここの住人を、そしてこの世界を救うために、翠にも精一杯努力してもらわないといけない。
いつも回復結界は僕の専門のようなものだったけれど、僕がこの世界の統制の方に尽力するのなら、間違いなく吉祥を司れる翠が"回復機能"の要となる。
今後に備え、無駄な力の放出はできる限りおさえたい。
そう思い、翠がこのまま睦月と僕を連れて、塔の外から頂上に向けて飛び続けようとしたのを拒み、一旦吉祥をしまって力を温存してもらい、睦月の先導で塔の内部から、物理的エレベータを使うことにした。
「確かに、このエレベータは高速移動だけどさ…」
ぶつぶつ、文句を言う翠の手のひらに僕はいる。
体がすっと持ち上がるような独特な浮遊感に、僕は荒っぽく煌に放られた、あの…無性に笑い出したい高揚した心地を押さえ、違うことを考える。
冷静になり、気になるのは…周涅の術についてだった。
僕が見ていなかったこの世界の概要を、かいつまんで翠から聞く。
周涅がこの世界にかけた術は、9つの石碑を使う"九星の陣"。
それは翠が最も信頼していた剣鎧童子が告げたという。
だが多分その発動時期は、僕たちも表世界で同時期に、周涅の同じ"九星の陣"によって、あの研究所内を彷徨させられてたと思う。
それを抜け出れたのは、美咲さんの命を持って。
ふたつの世界を股にかけてかけられていた術は、表世界ひとつだけでも…そこまでしないと破けないほど、強大なものだった。
裏世界の九星の陣。
それを破れるのは、別の方法だった。
石碑の正しい順路にて大きな力を一気に走らせる必要があった。
だが今になって思えば、同じ術だというのなら、もっと共通項があってもいいはずだと思う。
そう考えれば――
この世界でも、もしかして…誰かの命が必要だったのではないか。
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櫂達と別れ、睦月と翠と共に塔の頂上を目指していた僕。
間近で見る翠の能力は、以前に比べて飛躍的に開花している。
空高く浮遊できることも、それを維持出来ることも、同時に桜に似た吉祥という式神を使役できるのも。
一介の陰陽師というより新人類じみているが、それでも短期間での進化度は、驚嘆すべき事柄。
ただ、大きな力を一度に使い続けることによって、オーバーヒートのような反動が、いつ翠をおそうかわからない…その不安があった。
小康的になんとか落ち着いた、今の状況がこのまま続くならいい。
だが、この世界は不穏に揺れている。
ここの住人を、そしてこの世界を救うために、翠にも精一杯努力してもらわないといけない。
いつも回復結界は僕の専門のようなものだったけれど、僕がこの世界の統制の方に尽力するのなら、間違いなく吉祥を司れる翠が"回復機能"の要となる。
今後に備え、無駄な力の放出はできる限りおさえたい。
そう思い、翠がこのまま睦月と僕を連れて、塔の外から頂上に向けて飛び続けようとしたのを拒み、一旦吉祥をしまって力を温存してもらい、睦月の先導で塔の内部から、物理的エレベータを使うことにした。
「確かに、このエレベータは高速移動だけどさ…」
ぶつぶつ、文句を言う翠の手のひらに僕はいる。
体がすっと持ち上がるような独特な浮遊感に、僕は荒っぽく煌に放られた、あの…無性に笑い出したい高揚した心地を押さえ、違うことを考える。
冷静になり、気になるのは…周涅の術についてだった。
僕が見ていなかったこの世界の概要を、かいつまんで翠から聞く。
周涅がこの世界にかけた術は、9つの石碑を使う"九星の陣"。
それは翠が最も信頼していた剣鎧童子が告げたという。
だが多分その発動時期は、僕たちも表世界で同時期に、周涅の同じ"九星の陣"によって、あの研究所内を彷徨させられてたと思う。
それを抜け出れたのは、美咲さんの命を持って。
ふたつの世界を股にかけてかけられていた術は、表世界ひとつだけでも…そこまでしないと破けないほど、強大なものだった。
裏世界の九星の陣。
それを破れるのは、別の方法だった。
石碑の正しい順路にて大きな力を一気に走らせる必要があった。
だが今になって思えば、同じ術だというのなら、もっと共通項があってもいいはずだと思う。
そう考えれば――
この世界でも、もしかして…誰かの命が必要だったのではないか。