「ゴボウちゃんのことを悪く言うな!! すべては…ああ、力ない俺のせいだよ!! だけどゴボウちゃんはそんな俺を主だって言って消えたんだ!! ゴボウちゃんは……俺の大切な友達は!!」
飲み込む。
翠に向かわれる吉祥の力を、翠は飲み込んでいく。
どこまでも吸収する翠は、結界を強めた吉祥の首もとを片手で掴んだ。
どんな結界もものともしない、それはまさしく……翠の貫通の力。
それでも抵抗する吉祥に、俺と煌の力で、枷のようにその四肢を縛り上げた。
しかし主導権があるのは翠。
俺達の力は、翠の深緑色の力によって支配されているのがわかった。
その力の加減は翠次第。
俺達はただ力を抜き取られているだけ。
そして翠が制御した力は、混沌としたエネルギーとなり、この位置からでもびりびりと肌に感じるものとなる。
かつて――
初めて見た、緋狭さんの力を思い出した。
あの時俺は、その凄まじさに畏怖し、そして憧れた。
タイプは違うけれど、それだけの力の大きさを、翠は作り出している。
凄い、翠の力は――。
俺の中に眠る好戦的な血が、ざわめき出す。
今この瞬間に立ち会えたことが嬉しくて仕方がない。
負けるものかという気になってくる。
なにが出来損ないだ。
やはり、翠の潜在能力は大きかったんだ。
最後まで翠を崇めて散った護法童子は、最初から見抜いていたのか。
それをどうして周涅が見抜けなかった?
朱貴ですら、見抜いていただろうに。
護法童子が消えて、翠が怒りに覚醒したのだというのなら。
それで吉祥に向かえる力を持ったというのなら。
それこそ護法童子が、尊敬する主への"恩返し"なのだろう。
護法童子も、もしかすると吉祥を抑えられたのかも知れない。
しかし、レイの命となり消えることを選んだ。
その結果が、今の翠がある。
吉祥を抑える方に力を回していれば、翠は動かず傍観者でいたかもしれない。
その力が目覚めることなく。
翠の力が目覚めたのは――
俺や煌の力ではなく、堅い絆で結ばれていた…主従の力だ。
そこに少し妬ましさを感じるけれども。
例え護法童子は消えようと、それは翠の力となって生き続けている。
翠が作り出した式神の命は、翠の力となって循環しているんだ。
巡り巡る――
全ては俺達が願う未来に向けて。
その中に響き渡る声は、悪意を孕んでいた。
「やるならやれよ。それで俺が死ぬわけではない。死ぬのはお前の式神だ。続けて二体、殺してみろよ? お前の友達を」
笑う。
笑う。
姿なくとも、周涅の害意は耳から体内に流れ込んでくる。
「結局は、吉祥を従えない限り、肝心要のあの野良リスの力も使えまい。
死に損、力の出し損。
――手詰まりだ」
「くっそぉぉぉぉぉぉぉ!!」
そんな時だったんだ。
『告知します。アップデートが完了しました』
そんなニノの声と共に――
「は!? チビ!? どうしたんだ、チビ!?」
煌の慌てた声がしたのは。
レイがどうしたんだ!?

