………。
………。
は?
それは、用意されていた…重要度の高い選択肢にはないもので。
しかも――
「はああああ!!!?」
"その他"の分類としても、俺には思い浮かびもしない、はっきり言ってどうでもいいことで。
俺は焦って、櫂の双肩を両手で掴んで前後に揺すぶった。
「か、櫂…よく考えろ。情報はひとつしかねえんだぞ!!?」
「ああ、だからだ。だからこそ、この質問しかない」
どんなに俺に揺らされても、櫂は主張を曲げねえんだ。
不敵に笑うだけ。
「ねえ…サル。それは、僕がもっと沢山の胡桃をカリカリ出来る方法? それとも芹霞にぎゅっとして貰って、ちゅうして貰う方法?」
「翠殿。それは、ここまで腹が苦しくならずとも、簡単に我が大きくなれる方法か? それとももっと敵を蹴散らして、武勲を上げる方法か?」
………。
「煩悩塗れを黙らせろ、小猿!!!」
小猿が驚いて飛び上がった。
「櫂はん。証人として、確かめま。
ファイナルアンサー?」
「YES」
迷いない断言に、誰もが固唾を呑んだ。
玲の父親が裏世界に居た理由を知ったからなんだっていうんだ?
櫂の親父に追放されたから来たんだろうが。
さすがのお前でも、ちょっとおかしくなっちまったか?
貪欲な『気高き獅子』も、お疲れモードか?
何を他人事のように!!
俺のせいだ、全部俺のせいだろうが!!!
「翠殿。何故ワンコ殿は、突然頭を抱えて、足をダンダン鳴らし始めたのだ?」
「ゴボウ。頭がいい僕が教えてあげる。ワンコは"どじょうすくい"を踊りたいんだよ。くくくく。へたっぴだね。はあ…呆れてものが言えないよ」
「なんと!! ならば、我らで教えて進ぜようぞ?」
………。
「小猿!! とにかく黙らせろ!!」
またもや小猿が飛び上がったのが見えた。
くそ、こっちは真剣なのによ。
何処までも笑われるのがオチじゃねえか!!
だけど。
ちらりと見た玲の親父は――
「………っ」
顔を歪ませていたんだ。
「!!!?」
ひたすら悔しそうに。
「がはははははは!!」
響き渡る豪快な笑い声は、振り返らずとも判る。
毛のないクマだろう。
「さすがは貪欲な『気高き獅子』!!! 見事!!」
そう言うと、再びクマは豪快に笑った。

