あたしが悶々と考えている間にもう放課後。


「妃禾ちゃん、寮一緒に行こう!」


いつものように勇ちゃんに誘われて、寮に続く廊下を歩く。


「あのさ、理夜くんってどんな人?」


「え、なんで?」


勇ちゃんは可愛らしく首を傾げている。


「いや、あんまり喋ったことないから。」


勇ちゃんは暫く考えて、口を開いた。


「うーん……理夜はいい人。だよ。」


「うん、それはわかるんだけど……」


けれど勇ちゃんは微笑みを崩さず、


「理夜はいい人。とにかくいい人。だから嫌いになっちゃだめだよ?」


ただそう言うだけだった。




その後すぐそれぞれの部屋に着き、手を振って別れた。


勇ちゃんは『いい人』としか言わなかったけど、理夜くんには何かがある。

あたしはそう確信した。