「妃禾」





不意に誰かに名前を呼ばれた。




誰かって、そんなのすぐわかる。




あたしは、いつの間にこんなに好きになってたんだろう。




「無視すんなよ。」





その声と共にあたしの顎に手がかかった。




そしてそのまま理夜くんと視線が合う。





「あ…ごめん。」





すぐに、なるべく自然に目を逸らす。