「なぁ、尊?」
「あ?」
「由斗は綾菜をどこで見たって言ってた?もしかして病院とか?」
「病院?何で?」
尊はテーブルに落ちた箸を拾い、牛丼を食べ始める。
「遠くに引越しって、もしかして病気で長期入院することになったとかかなと。俺の勝手な想像だけど」
保育園側に本当のことが言えず、遠くに引っ越すみたいな言い方をしたのか……。
「いや、確か……ホテルの前で見たとか言ってたなぁ……」
「ホテル?まさかラブホか?」
「…………なわけねぇだろ」
尊はそう言ってクスリと笑った。
そうか、良かった。
ラブホに子供を連れて行くわけねぇか。
「普通のシティホテルだよ」
「そうか……」
でも何で、綾菜はシティホテルにいたんだ?
綾菜は両親も亡くなっていないし、親戚付き合いもないと言ってたのに。
だから親戚が遊びに来て、泊まっているホテルに会いに行くのは考えにくい。



