「マジかよ……」
尊が持っていた箸をテーブルに落とした。
信じられないって顔をしている。
「綾菜ちゃんがそんなことするわけ……」
「ないよな?」
「あぁ……」
「母子手帳を見るとさ、子供のことを細かく書いてんだよ。届いた荷物に入っていた手紙にも子供に対して、ああして欲しい、こうして欲しいって書いてんだよ。そんなヤツが子供を捨てると思うか?」
尊は首を左右に振った。
「保育園側は綾菜は遠くに引越しするから子供の面倒が見れなくなったから俺に預けたとか言ってたけど、話が合わねぇんだよ。どっちが本当のことを言ってるのか……」
「なんかさ、誰にも言えない事情があるんじゃね?」
「かもな……」
俺はそう言って、水を一口飲んだ。
誰にも言えない事情……。
それは何なんだよ。



