俺は、子供と同じ目線になるように、ゆっくりしゃがんだ。
それでも子供の手はしっかりとジャージのズボンを握ったままで……。
「なぁ、お前、どこから来た?」
俺がそう言ったにも関わらず、子供は目をパチクリさせたまま俺を見ている。
「パパは?ママは?ここはお前の家じゃねぇから。家は何階?連れて行ってやるから教えろ」
そう言った俺の眉間にはグッとシワが寄ってたと思う。
クリクリした目にはみるみる涙が溜まっていき今にも泣きそうな顔をしている。
「ふぇ……え……」
「だぁ!泣くな!泣くんじゃない!」
こんな朝っぱらから大声で泣かれたら近所なら何を言われるか……。
「ねぇ、ボク?パパとママはどうしたのかな?ここはねボクのお家じゃないからね。だから優しいお兄ちゃんが一緒にお家まで連れて行ってあげるから、ボクのお家、何階か教えて欲しいなぁ」
頬っぺたの筋肉を引きつらせながら無理矢理作った笑顔で優しく子供にそう聞いてみた。



