「一昨日、蒼太くんのお母様の方から遠くにお引越しされて、ある事情で蒼太くんの育児が難しくなるので、お父様に預けると言うお話がありました」
園長先生は、さきほどの蒼太に見せていたニコニコした笑顔ではなく、ニコリともせず真面目な顔をしてそう言った。
えっ?
引越し?
しかもある事情って何なんだよ。
綾菜はそんなこと一言も言ってなかったけど……。
「深山さんは蒼太くんとは離れて暮らしてらしたとか……」
「えっ?……えぇ……」
離れて暮らしていたと言うか、自分に子供がいたことは今日の今日まで知らなかったけど。
「蒼太くんのお母様は、蒼太くんの父親とは事情があって籍も入れられず、一緒に暮らせないと言ってました」
「そうですか……」
「失礼ですが、育児のご経験は?」
「ありませんけど……」
今日の朝まで一人暮らしだったんだから、育児の経験なんてあるはずもなく。
高校生なら毎日相手にしてるけど。



