綾菜と結婚?
そんなこと考えてもなかった。
綾菜のことは嫌いではない。
一度は本気で愛した女だ。
だけど、今、好きかと聞かれたら……。
「彼女と結婚する気はない、かな……」
「それはどうしてですか?」
「うーん……俺には、もう彼女に対して愛はないからかな……嫌いではないんだけど……」
「そうですか。でも先生と元カノさんが結婚すれば、蒼太くんは本当のパパとママと一緒に暮らせるわけですから、その方が丸く収まると思ったのですが……」
「うん、まぁ、そうなんだけど……。俺は愛してない女と結婚して一緒に暮らせるほど器用な男ではないから……。もし蒼太のために結婚したとしても結婚生活がダメになってしまったら、また蒼太を悲しませることになるしな……」
「私は今まで恋愛というものをしてきたことないので、よくわかりませんが、恋愛は複雑で難しいものなのですね」
今井はそう言って、紅茶を飲んだ。
確かに恋愛は複雑で難しいものなのかもしれない。
「今井、ありがとうな。そろそろ戻ろっか?」
「そうですね」
俺は冷めてしまった缶コーヒーを飲み干し、ベンチから立ち上がった。



