「そう言えばさぁ……三者面談のプリント、まだ今井だけ出てないんだけど……お父さん、出席は無理そうかな?」
沈黙を破ったのは俺。
ケーキを食べていた今井にそう聞いた。
夏休み前に配った三者面談のプリント。
期限が過ぎても提出がなかったのは今井だけだった。
「欠席でお願いします」
そう言うと思っていた。
牧野先生が今井の親は三者面談に来たことがないと言ってたから。
でも今年は、進路を決める大事な年だ。
「お父さんは海外だから仕方ないのはわかっているんだけどな……。代わりにお姉さんかお兄さんに頼めない?」
「無理ですね。姉も兄も何かと忙しい人なので」
「そっか……」
参ったな……。
「今年は進路を決める大事な年だから、出来ればお家の方と話がしたかったんだけど……」
「大学にも行きませんし、就職もしません」
今井は無表情のまま、淡々とそう言った。
「えっ?じゃあ、どうすんだ?永久就職するとか?」
でも前に彼氏はいたことないと言っていたけど……。
まぁ、それはだいぶ前の話で、もしかしたらいるのかもしれない。