「だからって、お前さぁ……」
『私だって自由になりたいんだよ!それにアンタにそんなこ言われる筋合いはない!』
何だよ、それ……。
テレビを見ながら踊っている蒼太の姿が目に入った。
母親に捨てられたとも知らずに、無邪気に笑顔で踊っている蒼太。
俺の視線に気付いたのか、蒼太が俺の方に笑顔で近付いてきた。
「パパ?」
蒼太の顔を見て、何も言えない俺。
『ちょっと!聞いてる?とりあえず、蒼太はアンタの子なんだから、アンタが育ててよ!』
「パパ?だれ?」
蒼太が手を伸ばして電話を取ろうとする。
「ママ?」
電話の相手が綾菜だとわかっているのか?
「ママ!」
蒼太がそう叫んだ時……。
『もう2度と電話して来ないで!』
綾菜はそう言って、慌てたように電話を切ってしまった。
5年振りに聞いた綾菜の声は、別人だった。
あの頃の優しかった綾菜の声とは全く違っていた。