「晴翔、ありがとう……」



顔を上げた綾菜の目は真っ赤に腫れていた。



「いや……」


「晴翔がいてくれなかったら私……」


「なぁ、綾菜?しばらくはホテルに泊まった方がいい。それから住むところと仕事を見つけて早く自立しろ」


「うん……」


「これ、使え」



俺はテーブルに置いたままの封筒を綾菜に差し出した。



「えっ?」


「これだけあれば、ホテル代や引越し代、その他必要な物も買えるだろ?」


「ダメだよ……もらえないよ……」


「いいから」



俺は綾菜の手に無理矢理、封筒を握らせた。



「じゃあ、俺帰るわ。何かあったらいつでも連絡して?」


「うん……」



椅子から立ち上がりカバンを持った。


そして伝票を持ってレジに行き、金を払いカフェをあとにした。