『アンタだって父親でしょ?』
「…………」
そう言われて、何も答えられなかった。
それは、まだ自分の中で子供が本当に俺の子か信じられないからだった。
『もう、疲れたの』
「はっ?」
綾菜の口から出た思わず、そう言ってしまった。
5年前に別れた綾菜。
電話の向こうの人物はホントに綾菜なのか?
「本当にそれだけの理由か?」
本当は他にも理由があるんじゃないのか?
『はぁ?何?』
「えっ?いや……」
『子供がいるとね、何でも制限されて自分のしたい事なんて何も出来ないのよ。仕事も制限される。保育園から電話がかかってきたら仕事中でも迎えに行かないといけない。アンタにさぁ、私の気持ちわかる?わかるわけないわよねぇ?』
俺は綾菜の言葉に何も言えなかった。
『とにかく、もう疲れたの。これから先、何十年とこんな生活が続くと思うと子供なんて産むんじゃなかったって思うわ』
綾菜はそう言ってクスッと笑った。
てか、本当にそう思ってんのか?
何でそんな事を笑いながら話せるんだよ。