綾菜は俺と目を合わせようとしない。


でも、その場から立ち去ることもしない。



「なぁ、ちょっと話をしないか?」



肯定も否定もしない綾菜は、ただ、ずっと下を向いていた。


俺が綾菜に声をかけたところに、ちょうどカフェがある。


俺は綾菜に手を伸ばし、綾菜の手をギュッと握った。


肩がビクンと揺れ、顔を上げた綾菜が俺を見る。


俺は綾菜に笑顔を見せて、綾菜の手を握ったままカフェの中に入った。