「香音、空斗?蒼太くんを連れて、あっちで遊んでてもらってもいい?」
「いいよ!蒼太くん、行こう?」
今井の妹が蒼太の手を取って、少し離れた場所に行った。
子供たちに聞かれたらマズイことなのか?
「先生、さっき園の門の近くで、ある女性を見かけました」
「女性?」
それと俺に何の関係があるんだ?
改まって話をしなきゃいけないことなのか?
「蒼太くんのお母さんです」
「えっ?」
綾菜が?
俺の胸がドクンと高鳴る。
それがモヤモヤに変わっていく。
「蒼太くんがまだ先生の家に行く前に、何度か保育園で見かけたことあったので、間違いないです」
「何で……」
「門のところで、園庭をジッと見ていたので声をかけたんです。そうしたら逃げるように行ってしまいました」
「なぁ、それって何分前くらいだ?」
「さっになので5分も経ってないと思います。先生、蒼太くんは私が見ておくので、行って下さい」
5分も経ってなかったら、まだその辺にいるかもしれない。
綾菜にはいろいろと聞きたいことがある。
俺は今井にお礼を言って、門の向かって走った。