「れいな、帰りましょう」


「れいなちゃんのお母さん、待って下さい」



俺の呼びかけに足が止まる、れいなちゃんの母親。


れいなちゃんの名字を最初に聞いとけばよかった。



「今回の件は、蒼太がれいなちゃんをケガさせてしまって申し訳ありませんでした。もし病院に行かれた際には治療費はこちらで全て負担させて頂きます」



俺はカバンから名刺入れを出した。


名刺を一枚取り出す。



「こちらに連絡頂ければ……」


「結構です!」



れいなちゃんの母親は、れいなちゃんの手を引いて和室を出て行ってしまった。


そのあと緊張が取れたのか、口から溜息がもれた。


れいなちゃんの母親に続いて園長も出て行く。


今回、園長は一言も発しなかったな。


絶対に文句のひとつも言われると思ったけど。