「夕方ではダメなんでしょうか?」
『お仕事をされていて、そう簡単には来られないのも重々承知です……』
「えぇ」
『でも、あの……』
綾瀬先生はそこで言葉を一旦切った。
とても言いにくそうな感じだ。
俺も教師という立場上、生徒同士のいざこざは今まで沢山見てきた。
俺の場合は高校生同士のいざこざで、よっぽどのことがない限り保護者を呼び出したりしない。
だいたいは当事者同士と教員で話し合い解決させる。
でも保育園児や幼稚園児はそうはいかないんだろう……。
『相手の親御さんがですね……』
「わかりました。伺います」
『ありがとうございます。お待ちしております』
綾瀬先生の言いたいことはわかる。
“相手の親御さんが”今すぐ俺を呼べと、ごねてるんだろう。
電話を切り、校長に事情を説明した。
かなり面倒臭い顔をされたけど。
それから副担にも事情を説明して、後のことをお願いしてから、俺は保育園に向かった。



