今井に、電話をかけてくると言ったけど、電話をかけることに躊躇していた。
その時、またスマホがブルブル震える。
画面に表示された綾菜の名前。
俺は小さく深呼吸をすると、スマホの通話ボタンを押した。
「もしもし……」
『あ、晴翔?』
「うん……」
『突然、電話してゴメンね……。忙しかった?』
「いや……」
綾菜と電話で話するのは、蒼太が俺の家に来た時以来だ。
あの時の綾菜と今の綾菜は別人じゃないと思うぐらいだった。
もう2度と電話をしてくるなと言った綾菜。
なのに綾菜の方から電話をかけてきている。
「何か用か?」
『別に用事はないんだけど……』
「うん……」
何だろう……。
綾菜は俺の元カノで。
めちゃくちゃ好きだった女だったのに。
久しぶりに聞く綾菜の声にドキドキすることもなかった。
寧ろ、イライラしている俺がいた。



