綾菜は妊娠したとか何も言ってなかった。
夢だったアメリカ留学が決まったと言っていた。
留学したいと望んでいた事は俺も知っていたし、綾菜の夢を応援していたから俺は綾菜からそう聞いた時は、心から素直に喜んだ。
だから、まさか別れを切り出されるとは思っていなくて……。
マンネリしていたとは言え、俺は綾菜の事を愛していた。
だからそれだけの理由で別れるなんて納得いかなかった。
説得しても何を聞いても“別れて欲しい”の一点張り。
だから俺は綾菜に“待ってる”と、そう告げた。
でも綾菜は首を縦に振ることなく、大学も辞めて、俺の前からいなくなってしまったんだ……。
まさか、こんなことになってるとは……。
でも、もしあの時に妊娠を告げられていたら……。
俺は素直に喜んだだろうか。
多分、それはない。