夏美は無言で俺の側に来る。
「悪いけど、蒼太を1階に連れて行ってくれないか?」
「えっ?あ、い、い、いいけど?」
「お前にもあとでちゃんと話をするから」
「わかった。蒼太くん、お姉ちゃんとあっちで一緒に遊ぼ?」
夏美は蒼太に笑顔を見せるけど、蒼太は首を左右に振って、ズボンを握ってる手に力を入れた。
って、お前は、お姉ちゃんじゃなくて叔母さんだ。
「蒼太?パパは、これからみんなに大事な話があるんだ。だからそれまで、この叔母ちゃんと一緒に遊んでおいで?」
「ちょ、お兄ちゃん!叔母ちゃんってねぇ!」
「立場上は叔母になるだろうがよ?それにお前は、もう、お姉ちゃんという年ではない」
「ちょっ!ムカつく〜!」
「…………ふぇ」
蒼太が泣きそうになる。
「蒼太?この叔母ちゃん、噛みつかないから大丈夫。あっ!そうだ!庭に犬がいるから見に連れて行ってもらえ?なっ?」
俺は蒼太の頭をポンポンとする。
「犬?」
犬に反応した蒼太は顔を上げて俺を見た。
「あぁ、可愛いぞー!名前はタローだ」
3年前に捨て犬を拾って来た親父。
どういう名前にするか決める家族会議で、親父の“犬の名前と言えばタローだろ?”の一言でタローに決定したらしい。



