Side美紀


「俺は裏切られたんだ。」


千尋くんは辛そうに顔を下に向ける。


自然に私の体が動く。


ギュッ


強がる千尋くんを抱き締める私。

千尋くんは黙って私の体に体を預ける。


「裏切られたって決めつけるのはまだ早いんじゃない?吉佳さんの話をちゃんと聞こう?」


私の視界に心配そうに千尋くんを見つめる吉佳さんが入る。

息が荒い吉佳さん。


「家族に血のつながりとか関係ないよ。」


だって吉佳さんのあの目。

あれは優しい目だよ。

誰かを愛する目。


私が向けられたことのない目。


「......わかってる。吉佳さんは俺を愛してくれている。わかってるけど.....。」


弱々しい千尋くんの声は続ける。


「吉佳さんは俺なんて要らないんじゃないかと思った。アイツらに簡単に俺をあげちゃうんじゃないかと.......、」


「違う。」


吉佳さんの声が聞こえる。

千尋くんは黙って腕に力を入れる。