Side美紀


「俺は所詮、お母さんたちにとって売ってもいい存在だったんだよ。」


辛そうに笑う祐希くん。


無理して笑うなって言ったのに。


「違うよ。」


お母さんはそんな風に祐希くんのことを思ってないよ。

祐希くんの名前を愛おしそうに呼ぶあの顔を覚えてる。

祐希くんに謝るあの辛そうな顔を覚えてる。


「祐希くんは祐希くんのお母さんにとって大切な存在なんだよ?」


震える祐希くん。


我慢してるんだね。


「甘えてよ。私には甘えていいんだよ?」


私は震える祐希くんを優しく抱き締める。


「我慢禁止。」


もうたくさん我慢したでしょ?

だからもういいんだよ。


「俺、売られたくなかった。俺だけ売るとかあり得ねー。」


祐希くんの怒りに染まった声。

そして続けて、


「売るなよ。バカ。なんでもするから。」


今度は寂しそうな声でそう呟く。


祐希くんの腕に力が入る。


やっと本音を言えたね。