きのこうどん

壊すくらいの勢いで力ずくで戸を引くとギギィッと、まるで低い音のするラッパでも取り付けてあるかのようなものすごい音をたてた。
 
「壊れた?」
 
ボクは戸を閉めまた同じ音が鳴るかどうか実験した。
 
もし、しなければボクが壊したことになり、後で怒られる。それは非常にマズイ。
 
「ギギィッ」
 
戸は見事にさっきと同じ音をたてた。うん。ボクは怒られなくて済む。
 
安心して中に入るとトイレに違和感を覚えた。
 
水を流す場所がない。紙と、トイレの詰まりをパッコンパッコン音たてるラバーカップしかない。いわゆるこれは、ぼっとん便所?
 
「ぼっとん便所だ。」
  
初めて見た。トイレをまじまじと観察するなんてことは多分ないと思う。
 
しゃがみ込み、奥の穴の方を覗き込んだ。奥の口は真っ暗で何でも吸いこめそうな冷たい風が吹いている気もする。
 
正式名称汲み取り式トイレ。昔の子ども達が誤って転落するという伝説の呪いのトイレだ。流さなくても良いトイレというのは妙な感覚だ。
 
「ちこ、ちこ~~~。」
 
ボクは大発見を伝えようと急いで行った。
 
「ちこ、ここすごいよ!トイレがブラックホール!トイレがブラックホール!」
 
相変わらず紫苑と遊んでいるちこにそう言うと少しだけ興味を持ってくれたみたいで2人でブラックホールを見に行った。