オフィスを出て、自販機の死角になる所まで来ると、いきなり廉が後ろから抱き締めてきた。




「廉?どうしたの…」




「悪い、実はさっきからずっとこうしたかった……」




廉は、はぁーと息を吐きながら、あたしの肩に項垂れる。




そんな彼に、愛しさが込み上げる。




「ふふっ、そんなにあたしとこうしたかったの?」




「あぁ、樹里は違うの?」




くるりとあたしを前に向けると、真剣な目でそう聞いてくる。




あたしは鋭い瞳にドキドキしながらも、そっと彼の胸に抱きついた。




「ずるいよ、廉」




「ははっ、何がだよ?」




分かってるくせに、意地悪そうに笑う。




廉はあたしの肩を掴むと、腰を屈めてゆっくりと顔を近付けてきた。




あ、キス…される。




そう思って、ゆっくりと目を閉じた。




その時。




――ガチャッ




「おーい、宮崎、雨宮!ちょっと言い忘れたんだけどさー……」