「そ、それで一多(ひとだ)さんは?」


何とも言えないその場の空気を断ち切ろうと再び聞いてみる。


「ああ…社長でしたね……一多(ひとだ)は5階の自宅におりますので連絡してみます。こんな僕でも電話くらい…あれ、おかしいなぁ…繋がらない…やっぱり僕なんて…」


「だ、大丈夫です!面接のお約束いただいているので…少し待たせていただいても?」


ここまでネガティブな人だとこんな私でも恐ろしく普通の人間の様に思えるのがすごいと思う。


私はただ、存在がない


というだけで


仲の良い友達も多少はいるし、性格も普通だと思う。


だけど、驚くくらい存在感がないだけだ。




来客用のソファーに座り、しばらく待ってみる。


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この沈黙に負けた………。


「ネクラさんは、こちらの社員の方ですか?」


珍しく自分から話しかける。


「はい、最初はアルバイトでしたがこんな僕でも社長は大事にしてくださり………あの…ネクラではなくょねくらです…………」


か細い声で話すヨネクラさんは


『ょ』の発音がやたらと小さくて聞き取りづらい。


「ごめんなさい!ヨ、ネクラさん…」


「いいんです…どうせ僕なんか…」