ノックしたものの、返事がないのでゆっくりとドアを押して開けると


幾つかの事務机が置いてあり、どこにでもあるような会社の事務所といった感じだった。


「あの…」


誰も見当たらないけど、取り敢えず声を出してみる。









「面接の人ですか…?」


「うわぁっ!!」


いきなり真横から人が出てきた。


「そんなに驚かなくても…僕はずっとここにいましたょ。やっぱり僕がこんなだから…誰も気づかないんだ…」


「ちょ、ちょ、ちょっと待ってください。あのすいません。私、面接にきたんですけど緊張してて…」


「いや、いつもの事なんで…どうせ、僕なんか…」


「あのっ!ひ、ひ、一多(ひとだ)さん、いらっしゃいますか?」


青白い顔をし黒渕のメガネを掛けたその人は


「ょねくらです…」


とか細い声でなんか言った。


「えっ、ネクラ?」


「ヨ、ネクラです…やっぱり僕がこんなだから…どう見てもネクラですよね……。こんな僕なんて……」


「そ、そんな事ないです。すいません。耳が遠いもんで…」


耳鼻科にかかったことなんて1度もない。