あっという間に、クルーザーがまた沖まで出ると
遠くでジェットエンジンの音が聞こえて、その音が段々と遠退いて行くのがわかった。
「どうやら操縦士は行ってしまったようだね?」
相変わらず、不気味にニコニコ笑う男性。
さっきまであんなに爽やかに笑ってたのに………。
一瞬でも打ち解けてた自分に悔しくなる。
だけど………
本当にどこかで会った気がするんだけど…
「ねぇ、何で私の事知ってるのよ。」
「ああ、気になる?君の事なら僕は何でも知ってるよ。この前はランチに駅前の洋食屋さんで食べてたね。その時、僕も君と一緒のを食べたよ。あまりおろしとかは好きじゃないけど君が食べるならと思ってね。」
どういう事?
凄く近くにいたって事?
「それから、そのワンピース。それはダメだね。君には丈が短すぎる。そもそもそれはあの男が作ったものだろう?そんなもの君に来て欲しくないな。大体、君は彼の事が好きなのか?」
「えっ?」
「どうしていつもあんな目で彼を見るんだ。君には僕がいるじゃないか!君は僕のものだろ?いや、僕のものになるんだっ!」
男性の声が段々と荒々しくなる。
私の腕をまた強く掴むと
「そんな薄汚いワンピース今すぐ脱がしてやる。来いっ。」
乱暴に私の腕を引き、船室へと続く扉へ向かおうとする。
一瞬で豹変した彼にさすがの私も恐怖を感じた。
体が固くなっていく。
やだ、このままだと私………
怖いっ……
助けて
社長………
ヨネクラさん………
「リョウさんっ…」
思わず叫んでしまった。



