二三五三「初瀬のサカキの下に俺が隠した妻。煌煌と照る月夜に他人に見られてしまうかも」柿本人麻呂歌集 2011.0706
・斎槻(ゆつき)は潔斎したケヤキで落葉樹なのでサカキは誤訳に近い。あかねさしは照れるを導く枕詞とも解せるが語彙を強調している。神話の解説が秀逸。

二三五五「いとしいと僕が思う、あの娘は早く死んぢゃえばいいのに。生きていたって僕に気があるらしいと世間が言うわけではないのだから」柿本人麻呂歌集 2011.1024
・旋頭歌(五七七五七七)。逆説的で身勝手な歌。

二三六四「小さな簾(すだれ)の隙間から忍んで入ってきてください。母に問われれば「風です」と言いますから」 2011.0414
・当時の住空間をどう復元するか? 1室に家族そろって寝ている所に男が夜這いをかけると一般に説明される。母と娘の心理的葛藤と男の性欲?

二三八二「大通りを人々は満ちて行き交うけど。私が思う君は、ただ1人のみ」柿本人麻呂歌集 2011.0530
・うちひさすは宮を導く枕詞。語義的にはひなたのような意味。宮道の語から朱雀大路を想像するが市の辻でも鑑賞として耐えうるのでは? 人麻呂と平城宮では齟齬が?

二四八〇「道ばたの曼珠沙華のはっきりとしているように。世間がみんな知ってしまった私の恋しい妻を」柿本人麻呂歌集 2011.0922・2012.0208
・いちしの花は彼岸花を指すのが一般的。伊勢の一志郡との関連を選者は考えている。解説は萬葉集の表記について、インテリの遊び。
・秋にたちまちに顕れる彼岸花のように人の噂に戸は立てられない。里山の象徴とされる彼岸花同様にレンゲ草も懐古的な趣があるが、ひさしく見ていない感じ、どこにある?