野趣好萬葉集(ワイルドヨロズハ)

一五一九「天の川に舟を浮かべて今夜は君が私の所に来られるだろうか?」山上憶良 2012.0217
・ひさかたのは天を導く枕詞。我がりのりは語調を整える助詞? 小泉八雲が愛したとされる七夕の萬葉歌。飛行機もネットもない時代、極東の小さな街(松江)の星空。

一五三八「萩の花、ススキ、葛花、ナデシコの花、オミナエシ、またフジバカマ、朝顔の花」山上憶良 2011.0829
・秋の7種類の花を読み込んだ歌。一五八七と対になっている。朝顔は花種は未詳。源氏物語でも夕顔はカンピョウの類。今の朝顔は江戸時代に珍重。

一五六四「秋めけばススキの上に降りる露のように。消えてしまいそうに私は思えるのです」日置長枝娘子(へきのながえおとめ) 2011.0715
・夏目漱石が『草枕』に引用。萬葉歌の菟原(うなひ)処女の歌は説話的・歌枕的なので代用したか? 境界性的な歌意が適切。

一五八三「色づいた葉を散らすような秋の雨に濡れてやってきて。君が(手折った)モミヂをカンザシにしたんだ」久米女王 2011.1027
・黄葉だからと言ってイチョウに限定するのは危険。赤から橙をへて黄色にいたる色をどう表現するか? 黄や紅もただ緑との対比。