一〇六八「空の海に雲の波だち。月の舟、星の林。漕いで遠のくのが見える」柿本人麻呂歌集 2012.0118
・この歌、形而下の事象で説明しようとすると野暮ったくなる。セカイ系アニメのような形而上の透明感で訳してみた。解説は略体・非略体歌の話。非公式の記録。

一〇八七「穴師川(あなしがわ)の川波が立ってきた。巻向山(まきむくやま)の弓月が岳(ゆつきがたけ)に雲が居座り立ちのぼっているらしい」 2011.0620
・近鉄の大和八木の東、大和盆地に入る時に見える巻向山。同時に家持の四一二三も紹介。雨の前兆としての気象。

一〇八八「山川の瀬音が鳴るのにともなって弓月が岳に雲が一面におおっている」柿本人麻呂歌集 2011.1116
・あしびきのは山を導く枕詞。弓月が岳は巻向山とされる。降り出した雨、瀬音が高まり山頂は一面の霧。神武東征は五條経由では? 古墳後期の起源神話。

一一〇一「夜がやって来ると巻向川の川音が鮮明になる大風が早いのか」柿本人麻呂歌集 2011.1108
・ぬばたまは夜を導く枕詞。黒玉をカラスや鵜の羽の色からウバタマ(烏羽玉)と呼んだことからの転訛では? 巻向は飛鳥と言うより桜井・天理でオオヤマトな感じ。

一一〇二「三笠山が帯にしている細谷(ほそたに)川の音の清純さ」 2012.0307
・大君のは三笠を導く枕詞。現代では奈良というと若草山を想起するが、その南にある三笠山は円錐形で神奈備(かんなび)とう聖的な山として古くから尊崇されている。大きな、どら焼き。

一一一八「太古にいた人も我々のように三輪の檜原にカンザシ(用の檜の枝を)折ったのであろう」柿本人麻呂歌集 2011.1013
・前期萬葉だから言葉や所作に呪力の残っていた時代。現代のパワースポットブームにも通じるのか? 三輪の地の聖性、ヒノキの聖性。