一六「」額田王 2011.1101
・天智天皇が中臣鎌足に春山万花の艶(におい)と秋山千葉の彩(いろ)を競わせた時に額田王が作った歌。冬ごもりは春を導く枕詞。列席者は漢詩で回答したと考えられているが『懐風藻』は大友皇子からなので、この時の漢詩は掲載されていない。

一八「三輪山をそのように隠してしまうのですか? 雲にだって心があって欲しい隠してよいものか」額田王 2011.0713
・近江遷都の折の長歌の反歌。天理~飛鳥あたりの住民にとっての三輪山の霊性。西の京まで上ると三笠山が注目される。山辺の道はこの2つの山をつなぐ。

二〇「紫草の野へ行き、天皇所有の野へ行き、野の番人は見ませんでしたか君がソデを振るのを」額田王 2009.0105
・あかねさすは紫を導く枕詞。現在のソデにするとは逆にソデを振るのは相手の気を引きつける呪術的行為。小説やマンガに取材される三角関係。

二四「この世での命が惜しまれて波に濡れてでも伊良湖の島の豊かな海藻を刈り取り食べる」麻続王 2011.0411
・地震から1月、東海の地から何かを語ろうとすると記号になってしまう恐怖がつきまとう。伊良湖にも津波が押し寄せ漁業に被害があったという。生命感が秀逸。
・伊良湖がどこを指すかは難しい。一般に伊良湖岬だが鳥羽からの島伝い神島も伊良湖の島かもしれない。二三題詞で伊勢国の伊良虞とする。紀に異伝。

三二「古人なのだろうか私は。楽浪(さざなみ)の古都を見ていると悲しい」高市黒人 2009.0210
・楽浪のは近江の地名を導く枕詞だが転じて大津旧都を意味する。
三三「楽浪の国つ神の(霊力が)衰えて荒れてしまった都を見ていると悲しい」高市黒人 2009.0210