野趣好萬葉集(ワイルドヨロズハ)

八九三「世間を、いやで身も細る所と思っていても羽ばたけないでいる鳥ではないので」山上憶良 2011.0517
・貧窮問答歌の短歌。やさしの語義の問題。世間を「よのなか」と読ますことから仏教的世界観との関連も指摘されている。鳥という別視点に立てない現状への甘受。

八九四「」山上憶良 2009.0112
・天平5:733年、憶良の自宅に来た遣唐大使・多治比広成に、はなむけとして「好去好来の歌」と題して贈った歌。トラディショナルな神々の守護と言語による旅の安全の祈願。

八九七「」山上憶良 2012.0130
・733年6月3日に沈痾自哀(不治の病にみずから哀しんで)して作った長歌。九七八の少し気をはった歌とは違い、老いた自分と子供への愛情と執着をリアルに読み込んでいる。長い病床もきついが老いとメンタルのギャップもきつい。

八九九「(生きるのが)やり場もなく苦しくて逃げ出して去ってしまおうとしてもコレに妨げられてるんだよね」山上憶良 2011.0630
・憶良独特の長大な前文のある長歌の反歌。仏教的世界観と執着から逃れられない俗物。萬葉時代独特の科学否定と生の肯定。現代との普遍性。