六三八「ただ1晩逢わなかっただけで1月過ぎたと戸惑ってしまった」湯原王 2011.0606
・あらたまのは月にかかる枕詞とされるがあらたまの月と表現することで1月の時間経過を表現しているよう。地方赴任と現地妻の問題、744年に禁止令が出ている。常套句か恋愛の盲目か。

六七〇「月神の光をたよりにおいでください。「山きへ」なので遠くないでしょ?」湯原王 2011.0711
・山きへが訳しだせない、山寸隔而。あしびきは枕詞。解説は一二九五満月説。満月だと「出た!」感がないんだよね。旋頭歌なので歌枕を使った観念の歌謡の可能性もある。

六九四「恋草を荷車に7台積んだように恋している私の心が」広河女王 2011.0610
・林芙美子が短編小説『秋果』に引用している。作品に重なるような芙美子の苦しい恋。それに反して、この歌、軽やかな気がする。恋草と草に見立てたことに勝因がある、草は重くならない。

七〇九「宵闇は道どりがたどたどしいでしょう。月を待っておられなさい私のアナタ、その間に(もう一度、私を)見て!」豊前国の娘子、大宅女 2012.0213
・この〈見む〉の艶めかしさ。見るとか名を交わすことがダイレクトに〈性〉に直結していた時代。戯れ歌。