ふと、遠くの方から声が聞こえて、俺は振り返る。
するとそこには、さっき墓の前にいた栗田のお母さんがいた。
少し肩で息をする様子を見て、きっと走ってきてくれたんだな、とぼんやり思った。
「もしかしてあなた、緒川くん……?」
そう名前を言われて、ドキリとする。
なんで、俺の名前を……?
「……はい……緒川ですけど……」
俺は少し緊張してしまって、声がガチガチになってしまう。
「ああ、良かった……。あなた、麗紀が亡くなる日に一緒にいた子よね……?」
栗田のお母さんは優しく微笑みながら言う。
その顔と声は、どこか栗田に似ていて。
俺は思わず、泣きそうになってしまう。



