雪が降れば、この街は真っ白になる。
……雪、見れるかな。
あたしは、あの冷たい雪に、触れることができるのだろうか。
「よし、ついたぞ」
そう言って、お父さんが車のエンジンを止めた。
ゆっくりと、車のドアを開ける。
目の前には、17年間住んでいた家。
ずっと住んでいたはずの家なのに、随分と懐かしく感じる。
「麗紀?入らないの?」
玄関で、お母さんが不思議そうに言った。
なんだか、違和感がある。
今お母さんがいる家が、17年間住んでいたはずの家が、
まるで、自分の家じゃないみたいだ。
「うん……入るよ」



