この他愛もない会話が、幸せだ。 車で、家族みんなで家に帰れる事がこんなに幸せなことだったなんて、知らなかった。 「……寒いね」 窓の外を見つめて言った。 「寒いか?暖房上げようか」 そう言ってお父さんが車の暖房の温度を上げた。 最近、やたら指先が冷える。 「麗紀、寒い格好してちゃダメよ?」 「わかってるって」 木の葉っぱも枯れている。 「こりゃあ、終業式あたりには雪が降りそうだなぁ」 「そうねぇ……」