優香ちゃんの病室に入って、あたしはベッドの横にあったイスに座った。
ここに来る途中、優香ちゃんのお母さんは「用事があるからまた後で来る」と言って行ってしまった。
「はい!これ!」
優香ちゃんはそう言って、この前みたいにあたしの膝の上のクマのぬいぐるみを置いた。
「……お兄ちゃんが、くれたんだっけ」
あたしがそう訊くと、優香ちゃんは満面の笑みで頷いた。
きっと彼女は、驚いたんじゃないだろうか。
この前の、あたしの反応を。
この病室で、緒川くんと会ってしまった時のあたしを。
……本当にあの時は驚いた。
多分、人生の中で一番驚いたんじゃないかってくらい。
そういえば、あたしこのぬいぐるみ落としちゃったんだよね……。



