「うん。……分かった」 少し笑って言うと、お母さんもあたしと同じように笑って、病室を出て行った。 パタン、と病室の扉が閉まった瞬間、強く握りしめていた手を緩めた。 手のひらに、爪の後がくっきりとついてる。 こんなに、こんなに爪の後がつくくらい手を握り締めることができたのに……。 あたしは、ペットボトルを掴めなかった。 もう、そんな力もない。 あたしはもう、物を掴むことも出来ない。 じゃあもう、この手で、この腕で、この体で、 一体なにが出来るんだろう。