「あ……ご、ごめんね。お母さん、手が滑っちゃって……」
そう言いながら、お母さんは床に転がったペットボトルを拾って、ベッドの備え付けのテーブルの上に置いた。
お母さんの、手が滑ったわけじゃない。
あたしが、掴めなかった。
ペットボトルを、掴めなかったんだ。
自分の手に、視線を落とす。
その手は、なんだか小刻みに震えていて。
あたしはその震えを隠すように、手を強く握った。
それでも、震えは収まらない。
「……麗紀?大丈夫?」
不安そうなお母さんの声に、ハッと我に返った。
「大丈夫だよ。……なんか、ボーっとしちゃって……」
ははっと、笑いを混ぜて言う。
そうしないと、泣きそうになってしまうから。
「疲れてるんじゃない?寝てなさい。お母さん、着替えとか色々持ってくるから」



